昨今の物価上昇は、家計を大きく圧迫しています。物価上昇に賃金の上昇が追い付いていないため、生活が苦しくなった方も多いのではないかと思います。最近では、新NISAやiDeCoなど、投資や資産形成がブームとなりつつありますが、投資に回せるお金なんてないという声も聞こえてきます。
しかし、考え方や工夫次第では、貯蓄に回すお金を捻出することができます。私自身、もともと浪費家で貯蓄とは無縁の生活を送っていましたが、今では年間の手取りの50~70%を貯蓄または投資に回すことができています。
この記事では、倹約を常に心がけている筆者の体験や経験をもとに、倹約家になるための考え方や実践の方法について詳しく説明します。家計を見直したい人や資産形成に興味がある人の一助となれば幸いです。
倹約と節約の違い
貯蓄するためには倹約もしくは節約することが基本となります。
そもそも倹約と節約とはどういう意味なのでしょうか。
「倹約」と「節約」は、お金を貯めるために生活を切り詰めるといったニュアンスで使われることが多く、意味が似ている言葉です。
倹約…費用を切り詰めて無駄遣いしないこと(お金限定で使う言葉)
節約…無駄を省いて切り詰めること(お金以外にも使える言葉)
ほぼ同じじゃないの?
いいえ違います。
私は倹約はしますが、節約はあまり意識していません。
「倹約」は費用の無駄だけを省くことを指しています。
「節約」はお金の他にも、生活をする中での様々な無駄を省くことを指しています。
節約は、安い食材で食費を抑える、電気をこまめに消して電気代を抑える、トイレットペーパーの使用量を最小限にする、シャンプーをワンプッシュにだけするといったように、生活に必要なあらゆるものの消費を極限まで落として蓄財することを目標としています。大抵は手間がかかることが多いです。これが「節約は大変」とか「節約は苦しい」といわれる所以で、生活レベルが下がったり精神的負荷が大きかったりします。
一方で倹約は、付き合いで行く飲み会を断る、引っ越しをして居住費を下げる、スマホ料金を見直す、手数料をなるべく払わないように工夫するといったように、お金に関することのみに特化し、生活レベルを下げずに経費を削減しながら蓄財することを目標にしています。お金をあまり使わないように努めることに主眼を置いているため、「ケチ」と言われることが多く、一般的に印象はよくないイメージがあります。
私の場合、お金に関することにはとことんケチになる性分ですので、倹約家ということになります。
ちなみに「ケチ」は私にとっての誉め言葉です。倹約していることを客観的に評価してもらっているように感じるからです(ひねくれ者ですいません)。
以下では、倹約による貯蓄の方法や考え方、またその道筋について紹介します。
倹約家になるロードマップを作る
倹約家の道①「家計簿をつける」
倹約家になるための第一歩は、家計簿をつけることです。
なぜこれを第一に行わなければならないのかというと、多くの人は1ヵ月で何にどのくらいのお金を使っているのか把握していないからです。
家計簿をつけることによって、ムダな支出を視覚化することができます。
予想以上に外食や飲み会に費やしていたり、お金を引き出す際に余計な手数料を支払っていたり、服にお金をかけすぎていたり…といったように、家計簿をつけることによって支出のムダに気づくことができます。
また、数カ月間、家計簿をつけていれば、前月と比べて支出が増えた、もしくは減ったというように、月ごとの支出の比較もできるようになります。数年間家計簿を継続すれば、前年と比べることも可能です。
身を削って働いた末にもらえる大切なお金を、管理もせずに使っていては蓄財することはできません。
ムダな支出を明確に洗い出すことができれば、そのムダな支出を絶対にしないと心に決めて意識して行動することができるようになります。
昔はエクセルで家計簿をつけていましたが、今はアプリを活用しています。マネーフォワードがおすすめですよ。
倹約家の道②「目標を立てる」
家計簿をつけた後は、目標を立てます。
目標は適切に定めなければ、意味のないものとなってしまいます。
「100万円貯めるぞ」や「ムダな支出を減らすぞ」といった目標は、まさに意味のない目標です。
なぜなら、目標の中に毎月の貯蓄額などの具体的な数値がない上、目標を達成するための取るべき行動が書かれていないからです。同じように「1年で1000万円貯めるぞ」のように達成することがほぼ困難な目標も意味がありません。
抽象的な目標や高すぎる目標は、意識されないことが多く、途中で忘れたり投げ出したりすることが多いです。
目標を立てる際に大切なのは、
自分の収入をきちんと踏まえた上で、「いつまでに」「いくら貯めるか」「そのために何をするか(しないか)」「毎月の貯蓄額は」などといったことを細かく設定する必要があります。
身の丈に合った目標金額を設定しましょう。
例えば、1年後に100万円貯めるためには…
いつ …1年後
いくら …100万円
毎月の貯蓄額…100÷12=8.33…(約84000円)
そのために …飲み会は月1回10000円以内にする
そのために …毎日弁当を作って昼の外食をなくす
そのために …趣味に使う金額は月10000円まで
そのために …ボーナスは全額貯蓄 など
以上のように、100万円貯めるための具体的な行動を明記することが大切です。
決めたことを全て実行できれば100万円貯められるし、できなければもちろん貯まりません。
サラリーマンの場合は、毎月ある程度決まった額を給料としてもらえるわけですので、目標を意識して行動すれば大抵の場合、目標金額を達成できます。
大切なのは、決めたことを確実に実行する意志の強さなのです。
蓄財に限らず、目標を意識して努力できる人は大きな成功を掴むことができますね。
倹約の実践編
日常的に倹約を意識しながら生活しておりますので、全ての実践をお伝えすることができませんが、私が特に大事にしている倹約の術の一部をお伝えします。
倹約家の道③「給料日に1ヵ月に必要な最低限のお金だけ引き出す」
話が変わりますが、「パーキンソンの法則」はご存じでしょうか。
パーキンソン氏が提唱したこの法則は2法則のみで構成されています。
第一法則→仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
第二法則→支出の額は、収入の額に達するまで膨張する
ここで注目したいのは、第二法則で「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」ということです。
例を挙げると、20万円の収入なら20万円まで支出が膨らむということです。
借金でもしない限り、収入を超える支出はできません。当たり前のことかもしれませんが、これは得たお金が無くなるまで使いたくなるという人間の心理をついており、人は収入に比例して支出を増やしてしまう性質があるということに気づかせてくれます。
ここで押さえておきたいのが、「収入が増えれば支出も増える」のであれば、「使えるお金を強制的に減らすことができれば支出も自ずと減る」ということです。
私の場合、給料が入った際、家賃、交通費、光熱費、クレジットカード代など確実に引き落とされるお金だけを口座に残し、残りは証券口座に入金しています。その他、念のため予備費として、現金を4万円だけ引き出しています。毎月の給料日にこの作業を行い、月に現金4万円のみで生活しています。
いやいや予備費が4万円じゃ無理なのでは?
現金4万円をなるべく使わない工夫をすればいいだけです。
私の場合、株主優待を利用したり、メルカリで物を販売したお金(メルペイ残高)で支払ったりするという工夫をしています。現金を使うことはあまりありません。
最近はメルペイを多用しており、不用品を売って得たお金(メルペイ残高)で支払うことが多いです。転売やハンドメイド品などの販売も経験しており、月に1,2万稼ぐのは決して難しくありません。このお金(メルペイ残高)をスーパーでの買い物やちょっとした外食、日用品の購入で使用すれば事足ります。今では、キャッシュレス決済が使えない場合に限り、現金を使うという感じです。
月4万円の現金を使い切ることはほぼないですよ。
使えるお金を強制的に減らすと、支出に充てられるお金がなくなり、必然的にお金を使わなくなります。
自由に使えるお金を強制的にするということは、自分でお金のない状態を作っているということになります。
(手元にお金がないのでどうしてもケチになります)
ただし、無駄な生活費を削っているだけで、生活満足度はとても高いです。
この効果は絶大で、蓄財ペースがかなり早まるのでおすすめです。
参考までに…
サラリーマン時代、手取りで月27万円、ボーナス2回(計100万円)ほどもらっていました。支出は以下の通りです。
〈固定費〉 ※固定費は妻と折半していたので、実際はこの半額です。
支払い家賃 …63000円
水道光熱費 …電気10000円、水道5000円、ガス10000円
交通費(車代)…15000円
通信費(2人分)…6000円
概算すると月6~7万円程度
(変動費) ※変動費は妻と折半ではなく、個人負担です。
食費 …10000~15000円
交際費 …15000円
趣味等 …10000円
概算すると月4万円程度
以上のように、固定費+変動費=11万円程度で生活していました。
もちろん慶弔費などの急な出費や車検、自動車税、大きな買い物などの臨時的支出もあります。平均すると毎月10~15万は貯蓄や投資資金に回すことができていました。もちろんボーナス年2回は全額投資資金に充てていました。よって私の年間貯蓄率は6~7割でした(切り詰めればもっと倹約できますが、生活の質が下がるほどの倹約はしません)。
倹約家の道④「ムダな支出を全てカットする」
倹約の本質である経費削減をできる限り行います。
家計簿をもとに支出のムダをリストアップして視覚化し、そのムダを今後一切なくすように意識して行動します。
「今日は仕事を頑張ったから」などといった理由で、決意を曲げるような例外はつくってはいけません。1度でも例外をつくってしまうと、それが癖になってしまいます。
以下は私が実践している経費削減の例です。
・会社の飲み会には基本行かない(新たな学びや出会い、生産性のない飲み会は時間とお金のムダです)
・スーパーの買い出しは車ではなく徒歩で行く(妻と子と散歩も兼ねています)
・ATM手数料は払わない(手数料のかからないゆうちょ銀行や楽天銀行を使っています)
・自炊する(料理の腕が上がります)
・昼食は手作り弁当を持参する(健康のためにも外食は避けています)
・水筒を持参する(外で買う飲み物は超割高です)
・たばこは吸わない(蓄財にも健康にも害です)
・買い物のビニール袋はもらわない(エコバッグを活用しています)
・コンビニや自動販売機で物を買わない(とにかく高いです)
・一人で外食しない(一人で外食してもつまらないので、妻や友人としか行きません)
・アウトドアに行くときは車中泊(ハイエースを車中泊仕様に改造しているのでとても快適です) など
一見、とてもストイックに倹約しているように見えます。しかし、私にとってこれらは苦ではありません。
なぜなら、自分の幸福度を下げるような経費は削減していないからです。
一方で、自分がこだわっているものや趣味、健康に関することにはきちんとお金をかけるようにしています。
年1回の人間ドック(胃カメラは毎年必ず行っています)
2~3カ月に1度は歯のメンテナンス(歯はとても大事です)
月2回のアウトドア(非日常で癒されています)
お酒はこだわる(お酒は料理を引き立たせます)
新たな学びや出会い、ビジネスチャンスのある飲み会は必ず行く(チャンスはいつ訪れるか分からない)
自分の人生の幸福度に影響のない余計な支出を最大限カットし、自分が本当に好きなことや大切にしていることにはお金はケチらないようにすることで、蓄財が加速するとともに、自分の人生を豊かにすることができます。
自分の人生の重要度の高いものとそうではないものをきちんと把握したうえで、
ムダな支出を全てカットしていきましょう。
倹約家の道⑤「余剰資金は投資に回す」
倹約の最大の目的は、投資資金の種銭をつくることです。
サラリーマンの場合、給料だけでは経済的に豊かになることはほぼ不可能です。よって、倹約でコツコツ貯めたお金は投資資金に回します。
なぜ投資が大切なのかというと、安定的な固定給をもらう普通のサラリーマンが大きな財を得ることは不可能だからです。投資にはそれだけ大きなチャンスが隠れています。
2024年から新NISAがスタートしました。
新NISAは絶対に利用したい制度です。
最初は数百円や数千円のリターンしかありません。しかし、それを継続すれば数十万円、数百万円のリターンに成長していきます。
もちろん必ず得をするわけではありません。さまざま投資していく中で、最終的にトータルでプラスになればいいのです。適切な投資を長期間行うことができれば、勝算の高いマネーゲームとなります。
初心者であれば米国株や全世界株の積み立て投資で問題ないと思います。
個別銘柄に興味があったり、株主優待が目的であったりする場合は、自分の好きな会社に投資することもおすすめです。最近では、仮想通貨の熱も高まっております。
今後、投資している人と
そうでない人の差が大きく開いていくはずです。
いずれにしても、自分の投資スタイルや投資の目的に合わせて、投資をすることが大切です。
倹約の最終目的は、お金に困らない状況を作り出すことにあります。
将来豊かに暮らすためには、今、倹約に励むしかありません。今頑張る人にのみ、明るい未来が待っているのです。
まとめ
宵越しの金は持たないような私が、倹約家になることができたように、誰もが自分の支出を見直すことで倹約家になることができます。
倹約することで人生が楽しくなくなるわけではありませんし、むしろ将来がどんどん豊かになると考えると、とても楽しいことのように思えます。「ケチ」は倹約家にとっての最高の誉め言葉です。
自分や大切な人を幸せにするために、倹約に励む人がたくさん増えてくれば私も嬉しく思います。
お金は自由と選択肢を増やすチケットです。そのチケットをムダに使わないように、日ごろから気を付けて生活していきましょう。